寝ているのに疲れが取れない人に足りないもの

「寝てるはずなんだけど、疲れが取れてない感じがあります。もう歳だから仕方ないんですかね」
そう言うのは、ある企業の従業員さんのAさん。営業担当。とても穏やかで、優しい性格の方。ただ、仕事はかなり量も多く、内容も自分に合っていない感覚があるらしい。苦手なりに努力して、仕事を続けてくれている人だった。
プライベートでも孫の面倒を見る手伝いをしていて、ずっと張り付いて世話をしているわけではないけど、休みの日も気ぜわしい。オフィス内のソファ席で私と向き合って話をしながら、少し困ったような顔で微笑んだ。
体調に大きな問題があるわけでもなく、持病があるわけでもない。
健康診断で大きな問題もない。
そんな中で、朝、疲れが取り切れていないという話は、流れでたまたま出てきただけかもしれない。
でも、私はその一言が気になった。
「もう歳だから」と笑って流せるような話に聞こえる。
でも、Aさんのように「十分寝ているのに疲れが取れない」という状態は、年齢以外から来る原因もあるのだ。
実は、疲れる種類によって、対策が違う。
疲れには、3つの種類がある。
身体疲労——立ち仕事や肉体労働、よく動いた日の疲れ。
神経疲労——パソコン作業、細かい判断の連続、情報処理の多い仕事。体は動いているけど頭がついてこなくて、ふとした瞬間にぼーっとしてしまったり、考えるような情報を入れたくなくなるのはこのパターン。仕事終わりにスマホのニュースは見たくないような、あの感覚。
感情疲労——気を遣い続けた日、場の空気を読み続けた日、自分には合わない仕事を「それでも」とやり続けた日の疲れ。怒ることや泣いた後にも、起きやすい。すぐに解決しない場合、じわじわとこの疲れが積み重なってしまうこともある。
Aさんの話を聞きながら感じたのは、仕事で無理をして、家に帰ったら、今度は孫の世話で気を張って、どちらも、感情と神経をじわじわ消耗させたのかもしれないということ。
睡眠が回復させてくれるのは、主に身体疲労だ。感情疲労と神経疲労は、寝るだけでは取れない。
足りなかったのは、じっくりゆっくり、自分のペースで好きなことをしたり、何もしなくていい時間。しんどい想いを吐き出せる時間だったのではないだろうか。
考えてみると、誰にも気を遣わなくていい時間が、現代人の一日の中にどれだけあるだろう。通勤中のスマホ、家でも家族や家事のこと、SNSの通知。意識しないと、神経と感情がずっと動き続けてしまう。
感情や神経の疲れは、自分では気づきにくい。「なんとなくしんどい」「寝ても疲れが取れない」と感じているなら、まず睡眠はたっぷりとることを大前提に、こんなことを試してみてほしい。
①スマホを置いて散歩してみる
②日記を書いてみる(できたら紙と鉛筆もしくはペン)
③心地よさを感じる場所や匂いを感じる
ペットが最強に癒されるという人は、猫カフェなどの触れ合える場所もいいかもしれない。「寝れば治る」以外の選択肢も、生活パターンに入れてほしいのだ。
頑張ることが悪いわけじゃない。でも、自分がやりたいと思えていないことや、今疲れていても無理して続けることを「当たり前だから」と踏ん張り続けるのは、通常以上のエネルギーを消費している。
昔よりずっと「無理しなくていい」と言われる時代になった。それでもまだ、無理をすることが当たり前になっている人は多い。そのギャップに、気づいてあげられるのは自分だけだったりする。その無理の責任をとれるのも、結局自分だけなのだ。
「歳なのかな」と諦め、受け止めていく歳の重ね方は私も大切だと思っているけれど、疲れている自分を他のことよりちょっとだけ優先させる柔軟さが、ご機嫌で楽しそうな大人を増やすことにも繋がる気がする。
そういう大人が一人増えると、その人の周りの職場や家庭も、少しだけ空気が変わる。疲れを我慢するのではなくて、自分のコンディションを整えることが、周りへの思いやりにつながっていく。
ぜひ、美味しいものを食べ、家族と話し、しっかりと仕事をする楽しさや幸せを、まるっと受け止められる自分のコンディションを作ってほしいと思う。
